2025年6月05日

消化器内科では、口から肛門までの消化管や、肝臓・胆のう・膵臓などの臓器に関連する多くの疾患を診療します。これらの臓器は日々の食事と密接に関わっており、私たちの健康を支える重要な役割を果たしています。消化器の病気は、軽度な不調から命に関わる重大な疾患まで幅広く存在します。ここでは、消化器内科でよく見られる主な疾患についてご紹介します。
逆流性食道炎
近年、特に増加している疾患の一つが「逆流性食道炎」です。これは、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流し、食道の粘膜を傷つける病気です。胸やけ、酸っぱいものがこみ上げる、喉の違和感、咳などの症状を引き起こします。生活習慣の変化(脂っこい食事、過食、喫煙、肥満など)が関係しており、薬物治療や生活指導によって改善が期待できます。
慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ストレスやピロリ菌感染、薬剤(特に痛み止めのNSAIDsなど)によって引き起こされるのが、胃や十二指腸の炎症や潰瘍です。症状としては、みぞおちの痛み、胃の不快感、吐き気、食欲低下などがあります。ピロリ菌が原因の場合は、除菌治療が推奨され、胃がんの予防にもつながります。内視鏡検査で診断し、早期に対応することが大切です。
過敏性腸症候群(IBS)
下痢や便秘、腹痛、お腹の張りといった症状が慢性的に続くにも関わらず、内視鏡検査では明らかな異常が見つからない場合、「過敏性腸症候群」が疑われます。ストレスや生活リズムの乱れ、腸内環境の悪化が関係しており、若年層にも多い疾患です。生活指導、食事療法、必要に応じて薬物療法を組み合わせることで改善が可能です。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸の粘膜にできる「ポリープ」は多くの場合は良性ですが、その一部はがんに進行することがあります。早期の大腸がんは自覚症状に乏しいため、便潜血検査や大腸内視鏡検査による早期発見が鍵となります。近年は食生活の欧米化により大腸がんが増加しており、40代以降は定期的な検査が推奨されています。ポリープは内視鏡で切除することができ、がん予防にもつながります。
脂肪肝・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
肥満や糖尿病などの生活習慣病と密接に関わっているのが「脂肪肝」です。特にお酒を飲まないのに肝臓に脂肪がたまる「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」は、日本人の成人の3〜4人に1人が該当するといわれるほど一般的です。進行すると「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」という状態になり、肝硬変や肝がんの原因になることもあります。治療は食事や運動を中心とした生活習慣の改善が基本です。
急性・慢性膵炎
膵臓は消化酵素を作る大切な臓器ですが、過度の飲酒や胆石症が原因で炎症を起こすことがあります。激しい上腹部の痛み、背中まで響くような痛み、吐き気などが主な症状です。膵炎は急性と慢性に分かれ、特に慢性膵炎では膵臓の機能が次第に低下し、糖尿病や膵がんのリスクが高まります。早期診断と生活改善が重要です。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
これらは自己免疫の異常によって腸に慢性的な炎症を引き起こす難病で、若年層に多く発症します。潰瘍性大腸炎は主に大腸の粘膜に炎症が起こり、クローン病は口から肛門まであらゆる消化管に影響を与えます。下痢、血便、腹痛、体重減少などの症状が続くのが特徴で、内視鏡や画像検査で診断されます。病気との付き合いは長期にわたることが多く、継続的な通院と専門的な管理が必要です。
肝炎(B型・C型)・肝硬変・肝がん
ウイルス感染による肝炎は、慢性化すると肝臓の細胞が破壊され続け、やがて肝硬変や肝がんに進行します。特にC型肝炎は無症状のまま進行することが多く、検査で偶然発見されるケースもあります。現在はウイルスを排除する新しい治療法が確立されており、早期発見で根治も可能です。肝臓の数値に異常があるときは、精密検査を受けることが大切です。
まとめ
消化器内科でよく見られる疾患は、現代人の生活習慣やストレス、加齢と深く関係しており、多くの方に身近な病気ばかりです。初期の段階では症状が軽く、気づかれにくいものも多いため、日々の体の変化を見逃さず、気になる症状があるときは早めに専門医にご相談ください。定期的な検査や適切な生活習慣によって、病気の予防や早期発見が可能になります。健康な消化器は、元気な毎日を支える土台です。