2025年7月06日
健康診断で「便潜血陽性」と言われると、「大腸がんかも?」と不安になる方もいらっしゃいます。しかし、便潜血陽性=がんではなく、痔や食事の影響でも陽性になることがあります。
本記事では、便潜血検査の内容から、再検査の必要性、内視鏡検査への不安まで、医師が丁寧に解説します。

便潜血陽性とは?便潜血ってどんな検査?
便潜血検査は、便の中に目に見えない微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。健康診断やがん検診で広く行われ、大腸がんの早期発見に役立ちます。
検査には以下のような特徴があります。
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簡単に受けられる(便を2日分採取して提出するだけ)
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痛みがない(採血などと異なり、身体的負担がありません)
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がんだけでなく他の出血源も検出(痔や炎症でも陽性になる可能性あり)
便潜血検査は「スクリーニング検査(ふるい分け)」の一つであり、精密検査が必要かを判断するための初期段階の検査です。
陽性だったからといって、すぐに病気と結びつける必要はありませんが、原因を調べるためにも無視せず適切な検査を受けることが大切です。
便潜血陽性でも心配ない?
「便潜血陽性」と結果が出ると、「大腸がんかもしれない」と心配になる方が多いですが、実際には陽性反応のすべてが「がん」によるものではありません。
以下のようなケースでも検査で陽性となることがあります。
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痔による出血
肛門の小さな傷やいぼ痔でも便に血が混じることがあります。
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食事の影響
赤身肉や鉄分を多く含む食事が反応することもあります(特に化学法)。
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大腸ポリープや炎症性疾患
良性のポリープや、腸炎などでも血が混じることがあります。
便潜血検査は、あくまで「便に血が混じっているかどうか」を見る検査であり、「がんの有無を直接判断する検査」ではありません。
陽性になった場合は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)などの精密検査で原因を確認する必要があります。
便潜血陽性になる原因は?
便潜血陽性の原因は「大腸がん」だけではありません。
実際には、より身近な理由で陽性となるケースも多く、以下のような原因が考えられます。
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痔による出血
便をする際に肛門周囲にできた痔から出血し、便に血が混ざることがあります。
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大腸ポリープ
良性のポリープでも出血することがあり、便潜血反応が陽性になります。
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腸炎や感染症
腸内で炎症が起きていると、粘膜から出血し、便に混じることがあります。
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赤身肉などの食事
特に化学法を用いた検査では、牛肉やレバー、ほうれん草などの摂取によって陽性になることも。
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月経中の便採取
女性の場合、生理中に便を採取すると血液が混ざって陽性となる場合があります。
便潜血陽性には多様な原因があり、必ずしも病気と直結するわけではありません。
しかし、精密検査(大腸内視鏡検査)を受けることで、安心につながるだけでなく、早期発見・早期治療につながります。
便潜血陽性と診断されたけど症状なし…それでも再検査が必要な理由
「お腹が痛くないし、便も普通。症状がないから大丈夫」と思っていませんか?
大腸がんやポリープなどの疾患は、初期にはほとんど自覚症状が現れないことが多い病気です。
「症状がないから大丈夫」と放置するのはリスクがあります。便潜血陽性だった場合は、早めに専門医に相談しましょう。
以下の理由から、症状がなくても再検査は重要です。
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無症状でも出血している可能性がある
微量の出血では見た目に変化はなくても、腸内では異常が進行していることがあります。
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便潜血検査はスクリーニングにすぎない
便潜血検査だけでは原因の特定ができません。大腸カメラなどの精密検査で詳しく調べる必要があります。
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再検査でしか見つからない病変がある
特に大腸がんや前がん病変(ポリープ)は、内視鏡でなければ見つからないことがあります。
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安心のためにも受けておくべき
異常がなければそれで安心。万が一異常が見つかっても、早期発見ができれば治療の選択肢が広がります。
大腸内視鏡検査は怖い?不安な方への検査内容と対策
「内視鏡検査は痛そう」「恥ずかしい」「つらそう」など、内視鏡検査に対して不安を感じる方がほんどだと思います。しかし、近年の内視鏡検査は苦痛の少ない方法が確立されており、多くの方が安心して受けられるようになっています。
当院でも、患者さまの不安をできるだけ軽減するよう配慮、対策をしています。
気になることがあれば、事前にご相談ください。
当院の大腸内視鏡検査に対する不安と対策
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痛みへの不安
鎮静剤を使用することで、眠っている間に検査が終わるため、痛みを感じにくいです。
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検査中の不快感
炭酸ガス送気により、お腹の張りが軽減され、従来よりも快適に検査を受けられます。
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恥ずかしさ
プライバシーに配慮した環境で行います。ご安心ください。
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前処置(下剤)が大変
リラックスして下剤を服用いただけるよう、トイレ付き完全個室での服用、下剤バーを設置しております。また、下剤の種類も複数ご用意しております。
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仕事への影響
日帰りで受けられるため、検査後すぐ帰宅できます(鎮静剤使用時は車の運転はできません)。
再検査を受けないとどうなる?放置のリスクと早期発見の重要性
便潜血陽性のまま放置すると、重大な病気を見逃す可能性があります。特に大腸がんは初期段階で自覚症状が出にくいため、発見が遅れると進行してしまうリスクが高くなります。
再検査を受けなかった時に考えられるリスク
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大腸がんを見逃す可能性
がんの初期は出血以外にほとんど症状がありません。再検査を受けずにいると、発見が遅れ、治療が難しくなる可能性があります。
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進行がんへの移行
早期がんであれば内視鏡での切除が可能なこともありますが、進行すると手術や抗がん剤治療が必要になります。
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ポリープの放置による悪化
一部のポリープは時間とともにがん化するため、早めの除去が望ましいです。
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精神的な不安が続く
「本当に大丈夫だろうか…」という不安を抱えたままでは、日常生活にも支障をきたすことがあります。
まとめ
便潜血陽性と聞くと、「大腸がんの可能性も…」と不安になりますが、必ずしも深刻な病気とは限りません。痔や食事など、日常的な原因で陽性となることもあります。
便潜血検査はあくまでスクリーニング検査であり、精密検査を行わなければ原因の特定はできません。自覚症状がない場合でも、再検査を受けることが重要です。特に大腸がんは初期症状が乏しいため、早期発見のためには大腸内視鏡検査が欠かせません。 当院では、苦痛の少ない大腸内視鏡検査や丁寧な説明で、患者さまの不安をできるだけ軽減するよう努めています。「便潜血陽性」と診断された方は、不安を一人で抱え込まず、ぜひ当院にご相談ください。
よくある質問
便潜血陽性は、あくまで「便に血液が混じっている可能性がある」という結果であり、必ずしも大腸がんとは限りません。痔や一時的な炎症、食事の影響などでも陽性になることがあります。原因を明らかにするためには、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要です。
特に化学法を用いた便潜血検査の場合、赤身肉(牛肉・レバーなど)や鉄分を多く含む食品(ほうれん草など)は反応を引き起こすことがあります。可能であれば、検査前はこれらの摂取を控えることが望ましいです。検査方法によっては影響が出ないものもあるため、事前に確認しましょう。
生理中に便を採取すると、血液が混入して偽陽性になる可能性があります。できれば生理期間を避けて便を採取することをおすすめします。やむを得ず採取する場合は、医師にその旨を伝えてください。
便潜血検査は、スティックで便の表面をまんべんなく複数回擦り取ることが大事です。便の中から採取すると、表面に血液が付着していても採取できず、偽陰性となることがあります。
便潜血検査は、大腸がん検診が始まる40歳から開始することを推奨します。40代から便潜血検査を始めることで、その後の人生の大腸がんの発症率、死亡率が低下したという報告もあります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
> 40歳からの便潜血検査が、大腸がんの未来を変える