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運動で胃がん・大腸がんのリスクを減らせる?最新研究からわかった「続ける力」の重要性

運動で胃がん・大腸がんのリスクを減らせる?最新研究からわかった「続ける力」の重要性|里村消化器内科・胃と大腸内視鏡クリニック

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2025年11月01日

こんにちは。
院長の稲田です。

最近、ハーバード大学の研究チームが発表した大規模な論文(JAMA Oncology, 2025年10月掲載)で、
「長年にわたって適度な運動を続けることが、消化器系がん(胃・大腸・肝胆膵など)のリスクを下げる」ことが明らかになりました。

研究の内容

この研究では、アメリカの医療従事者23万人を最大32年間追跡。
参加者の運動量を「MET(メッツ)時間/週」という指標で評価しました。
たとえば、

早歩き1時間 ≒ 約3〜4 MET
ランニング1時間 ≒ 約7〜8 MET

週150分(2時間半)の中程度運動=約7.5 MET時間/週が、がん予防にも推奨されている目安です。

主な結果

長期間のデータから、次のような結果が得られました。

比較     
高運動群(≥45 MET-h/週) vs 低運動群(<3 MET-h/週)    
消化器系がんの発症リスク 17%低下
死亡リスク 28%低下

さらに、「どれだけ運動したか」よりも「どれだけ続けたか」が重要であることも判明しました。

約17 MET-h/週(=週5時間の早歩き、または2時間のランニング)を
30年間継続している人では、がんリスクが約17%低下。
それ以上の激しい運動をしても、追加的な効果は見られませんでした。

部位別ではどうだったの?

研究では部位ごとの解析も行われ、次のような傾向が示されました。

がんの種類        リスク低下の傾向
大腸がん           約20%リスク減少(明確に有意)
胃がん       やや減少傾向(有意性は弱い)
膵臓・肝臓・胆嚢がん     30%前後のリスク減少と強い関連
全体(消化器系がん)     約17%リスク減少

とくに大腸がんや肝胆膵がんで効果が顕著でした。
胃がんでも同様の傾向がありましたが、感染や食生活など他の要因も関係すると考えられます。

なぜ運動でがんが減るの?

運動は単に体重を減らすだけでなく、

・血糖・インスリンのコントロール改善
・慢性炎症の抑制
・免疫機能の強化
・腸の動きを活発にし、発がん物質の滞留を防ぐ

といった生理的な作用を通じて、がんの発生を抑えると考えられています。

🚶‍♀️ 無理なく「続ける運動」を

短期間に激しい運動をするよりも、
「中等度の運動をコツコツ続ける」ほうが、がん予防に効果的です。

たとえば…

・1日30〜40分の早歩きを週5日
・通勤時に1駅分歩く
・階段を使う

といった習慣で十分です。

当院からのメッセージ

大腸がんや胃がんは、日本でも依然として多くの方が罹患する病気です。
運動や生活習慣の見直しとあわせて、
定期的な内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)による早期発見が最も重要です。

「何も症状がないときこそ検査のチャンス」です。
ぜひ年に一度の内視鏡チェックを習慣にしましょう。

🖋 参考文献
Zhang Y, et al. Consistent Adherence to Physical Activity Guidelines and Digestive System Cancer Risk and Mortality.
JAMA Oncology. Published online October 30, 2025. doi:10.1001/jamaoncol.2025.4185

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