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若年層の大腸がんが増えている理由とは?今注目の原因と予防法を最新の情報から紹介します。

若年層の大腸がんが増えている理由とは?今注目の原因と予防法を最新の情報から紹介します。|里村消化器内科・胃と大腸内視鏡クリニック

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2025年5月31日

大腸がんといえば中高年の病気と思われがちですが、最近では20代〜40代の若年層での発症が急増しています。
これは単なる早期診断の結果ではなく、実際の発症率が上昇していることが明らかになっています。

今回は、最新の記事(Rubin R. Rates of Colorectal and Other Cancers Are Rising in Young Adults, Puzzling Researchers. JAMA. Published online May 30, 2025.)で紹介された、若年層に増える大腸がんの特徴、原因、予防について解説します。

【若年層に増加する大腸がんの実態】

JAMA誌に掲載された報告によると、2030年までに大腸がんの約15%が50歳未満で発症すると予測されています。増加傾向にあるがんには、大腸がん、小腸がん、乳がん、膵がん、腎がんなどがあり、前立腺がんや肺がんなどは減少傾向にあるという対照的な結果も出ています。

【大腸がんの症状と診断の遅れ】

若年層の大腸がんは、スクリーニング対象から外れていることが多く、腹痛や下血などの症状が「痔」などと誤診されるケースも少なくありません。そのため、診断が遅れ、進行してから発見される例も多いのが現状です。大腸がんは早期発見が非常に重要であり、年齢に関係なく気になる症状があれば早めの内視鏡検査が推奨されます。

【大腸がんの原因:遺伝・腸内環境・生活習慣】

大腸がんの16〜35%は、リンチ症候群などの遺伝性がん症候群が原因とされています。しかし家族歴がない場合でも、腸内細菌(Fusobacterium nucleatum)や、腸内毒素(コリバクチン)などが発症に関与することが明らかになっています。

特に2025年、国立がん研究センター研究を含む11カ国の研究により、大腸菌の一部が産生する毒素「コリバクチン(colibactin)」が大腸がんを引き起こす要因であることが確認されました。この毒素はDNAを損傷させ、腸内環境の乱れや食生活の影響で活性化するとされています。(Nature. 2025 Apr 23)

その他、肥満、夜型生活、妊娠中の抗生物質、マイクロプラスチックの摂取、さらには父親の職業による化学物質曝露などもリスク因子とされています。

【地域差・社会的格差も関係】

米国では、ミシシッピ州やケンタッキー州など、南部の地域で若年層の大腸がん発症率が高いことが報告されています。社会的決定要因(Social Determinants of Health)として、保険の有無、人種、収入、教育などの違いが、がんの早期発見や治療機会に影響を与えていると考えられます。

【まとめ:若年層の大腸がん予防には内視鏡検査がカギ】

若いからといって安心はできません。大腸がんは早期に見つかれば内視鏡でのポリープ切除のみで完治も可能です。腹痛、血便、便の異常など気になる症状があれば、年齢に関係なく「胃カメラ・大腸カメラ」を含む内視鏡検査を受けることをおすすめします。

当院では、若年層の方も安心して受診いただけるよう、鎮静剤を使用した快適な内視鏡検査や、AI内視鏡による精度の高い診断体制を整えております。

※本記事は、JAMA誌(2024年発表 Rita Rubin著)および国立がん研究センター(2025年5月21日プレスリリース)の内容を参考に、医療情報の啓発を目的として要約・編集しています。